時間軸にそって過去から現代に記述。
1.
安藤博の「中和(ニュートラライゼーション)」特許 :これが 人類史最古
1910年代〜1920年代、三極真空管を高周波増幅させると、内部の電極間容量(プレート・グリッド間)を介して出力信号が入力に戻り、激しく異常発振(発振歪み)を起こすのが世界共通の最大の課題でした。
安藤博は1919年(大正8年)という極めて早い段階で、「電極間の容量を、外側に組んだ回路(ブリッジ・逆位相回路)によって相殺(中和)して発振を止める」という画期的な「中和増幅回路」を発明し、日本で特許を出願・取得しました(特許第80948号など)。
後にベル研からNFB特許で1932年に出願され、ベル研の認可に至るまで5年かかった。
ユニパルス真空管展示室 を覗くと詳しいよ
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2
抵抗ブリッジを利用した最古の特許。 「ベル研エンジニア」 ハロルド ブラック氏。

「ブリッジ回路で歪キャンセル」はIRE 1931年規定以前の発想。アンプ動作についての認識が業界で一致していない時に これを思いついたのは凄いわ。アンプの記号が三角形ってのはいまもお同じだわ。
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3
そこでブラックがさらに電話通信網での研究を重ね、1927年に考案したのが負帰還(Negative Feedback)です。出力をひっくり返して(逆位相で)入力に戻すというこの手法は、回路が多少変動しても自動的に歪みを抑え込み続ける圧倒的な安定性を持っていました。
306個の実機をならべて実証実験し、これの包括的な基本特許が登録されたのが1937年です。
ベル研究所の天才数学者ハリー・ナイキスト(Harry Nyquist)が1932年に完全に数式で証明しました。これが有名な「ナイキストの安定判別法(Nyquist stability criterion)」
オイラも名前だけは知ってる Nyquist stability criterion
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4

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5
QUADのピーター・ウォーカー氏が 論文冒頭に紹介しておるように、ベル研のハロルド ブラック氏の高周波回路でのNFB技術(US2102671A)から hintを得て audio展開したと書いてある。

「class B と 電流帰還制御」が特徴。
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6
1982年公開のサンドマン博士のclass s。
「ベル研エンジニア」 ハロルド ブラック氏は ブリッジ回路2組であったが、上手に1つにした。

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負帰還させて歪減らす(増幅量を加減する)のは、日本人のアイデア。
これが日本人の先行特許を 超えるために、ベル研は通信網整備を兼ねて、実証実験にゼニ投資した。ここで米国での電話超距離・多重有線通信網ができた。
ベル研究所「負帰還アンプ」実証実験の推定費用概略(現代換算価値)
1930年代にベル研究所(および親会社AT&T)がハロルド・ブラックの「負帰還(NFB)アンプ」を実用化するために動かした、1万1,000kmにおよぶ巨大インフラ実験の推定費用一覧です。当時は「電気のない荒野」へ通信線を通じて数千ボルトの電力を同時に送る(遠隔給電)必要があったため、土木・送電系のコストが天文学的な規模に膨れ上がっています。
当時ベル研究所が実用化した「C型キャリア(搬送)電話システム」などでは、電線(むき出しの銅線)に対して以下のように周波数を割り当てていました。 [
1]
- 0 〜 3kHz(通常帯域):普通の電話の声(ベースバンド信号)をそのまま流す。
- 7kHz 〜 10kHz、あるいはそれ以上(キャリア帯域):別の通話を、45kHz前後の高周波(電波と同じ性質の交流信号)へと変調して同じ電線に同時に流す
| 項目(コスト要素) |
推定スケール / 内訳 |
現代換算の推定価値(概略) |
技術的な役割・背景 |
| ① 高周波同軸ケーブル代 |
総延長 11,000 km (1mあたり500円換算) |
約 55 億円 |
高周波の多重キャリア(チャンネル)信号を遮蔽・伝送するための、当時最高峰のハイテク銅・鉛被線。 |
| ② 埋設・敷設インフラ資産 |
都市部・幹線地下への埋設工事 (既存の商用ルートの占有・転用) |
約 5,500 億円 |
実験のために丸ごと長期間占有・ループさせた、AT&Tが誇る国家インフラ級の地下幹線資産。 |
| ③ 遠隔送電・給電システム |
電気のない荒野へ数千Vを流す 高圧直流給電プラントの建設 |
約数百億 〜 1,000億円 |
電気が来ない奥地の中継器(アンプ)を動かすため、大都市側の給電所から電力を力技で送り届ける変電設備。 |
| ④ 送電・通信の分離フィルター |
306箇所のアンプ前後に配置する 大型チョークコイル(L)やCの群 |
約数十億 〜 100億円 |
同一の電線内で「アンプを動かすドデカい電気」と「繊細な高周波信号」が混ざってショートしないよう分離する特殊部品。 |
| ⑤ アンプ本体の製造・調整 |
最新のキャリア通信用 真空管アンプ 306台 |
約数億 〜 十数億円 |
当時の真空管技術の限界に挑んだ、1台あたり数百万円相当の超精密ハイテク機器。 |
| ⑥ 荒野の維持管理・人件費 |
25マイル(40km)ごとの監視小屋、 エリート科学者たちの現地張り付き |
約数十億円 / 年 |
荒野の落雷や断線による「送電・通信トラブル」から全米幹線を守るための、超過酷なメンテナンス体制。 |
💡 歴史的な対比と美学:
ベル研究所は、数千億円におよぶ巨大インフラ(45kHz帯での音声信号伝達)を守るため、大型のチョークコイル(L)やコンデンサ(C)を駆使して「送電」と「通信」を泥臭く切り分け、負帰還アンプを成立させました。
それから40年後の1975年、イギリスのピーター・ウォーカー(QUAD)はbell研特許をベースにcurrent damperを公開しました。
この「45kHzの電線伝送」が、なぜブラックの負帰還アンプ(NFB)誕生の直接の引き金になったのか、その現実的な仕組みを解説します。
1. 45kHzの有線伝送(C型キャリアシステムなど)の現実
当時ベル研究所が実用化した「C型キャリア(搬送)電話システム」などでは、電線(むき出しの銅線)に対して以下のように周波数を割り当てていました。 [
1]
- 0 〜 3kHz(通常帯域):普通の電話の声(ベースバンド信号)をそのまま流す。
- 7kHz 〜 45kHz、あるいはそれ以上(キャリア帯域):別の通話を、45kHz前後の高周波(電波と同じ性質の交流信号)へと変調して同じ電線に同時に流す。 (電線に5khzごとに9つ信号をssbで載せる)
物理的には、空間に電波を飛ばす代わりに、電線をガイド(導波路)にして電波と同じ高周波エネルギーを送り込んでいる状態です。
2. 45kHzで発生したアンプの限界
この電線を伝わる「45kHzの信号」を途中で増幅するために真空管アンプ(ウエスタニ エレクロトック社の真空管175HQ と中継器)を通しますが、ここで凄まじい問題が起きました。
- 真空管の非直線性のせいで、アンプの中で10kHzの信号が歪み、その高調波(20kHz、30kHz…)や、元の3kHzの音声と混ざり合う相互変調歪み(インターモジュレーション)が発生します。 [1]
- これにより、通常の電話(3kHz)のラインに、10kHzキャリア側の会話がノイズや混線となって激しく侵入し、通信網として完全に破綻してしまいました。
3. ハロルド・ブラックの歴史的実験データ
ハロルド・ブラックが1927年12月に、この問題を解決するために試作した初期の3段負帰還アンプの実験データが記録として残っています。 [
1]
- 実験の周波数帯域:4kHz 〜 45kHz
- 結果:この「10kHz帯を含むキャリア通信帯域」において、負帰還をかけることで歪みを10万分の1にまで激減させることに成功しました
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「45kHzの信号(搬送波:キャリア)に対して、人間の声(音声信号:0.3〜3.4kHz)を乗せて電線に流す」という行為は、通信工学における最も古典的かつ基礎的な変調システムにあたります。
この45kHzという高周波の有線伝送で行われていた変調の具体的な仕組みを解説します。
1. どのような変調だったのか?
当時、ベル研究所(AT&T)が実用化した有線多重通信(キャリア電話システム)で使われていたのは、「AM(振幅変調)」、さらにそれを洗練させた「SSB(単一側波帯変調)」でした。
- 仕組み:45kHzのきれいな正弦波(キャリア)に対して、音声の強弱に合わせてその「振幅(波の高さ)」をリアルタイムに変化させます。 [1]
- 周波数帯の変化:変調をかけると、45kHzを中心に、音声の周波数(約3kHz)の分だけ上下に広がった「側波帯(42kHz〜48kHz)」という新しい高周波の電気信号が生まれます。
- SSBの採用:ベル研は電線の帯域を節約するため、フィルターを使って「45kHz〜48kHz(あるいは42kHz〜45kHz)」の片側だけを取り出して電線に送信していました(これがSSB変調です)。
2. なぜ「変調」して45kHzにする必要があったのか?
人間の声をそのまま電線に流すと、1つの電線(ペア)に対して1本の通話しか流せません。
しかし、以下のように変調して「周波数を上に引っ越し」させることで、同じ1本の電線に何本もの通話を同時に押し込めるようになります(周波数分割多重化:FDM)。
- 1ch(そのまま流す):0.3 〜 3.4 kHz の生音声
- 2ch(変調する):10kHz の信号に音声を乗せる → 10〜13kHzの有線伝送
- 3ch(変調する):20kHz の信号に音声を乗せる → 20〜23kHzの有線伝送
- :
- 9ch(変調する):45kHz の信号に音声を乗せる → 45〜48kHzの有線伝送
このように変調された「電波と同じ性質を持つ高周波電流(10kHz〜45kHzなど)」が、1本の電線の中を同時に、混ざり合うことなく流れていきました。 [
1]
3. ハロルド・ブラックの負帰還アンプ(NFB)の実験データ
前述の通り、ハロルド・ブラックが1927年12月に完成させた最初の本格的な負帰還アンプは、まさにこの多重有線通信網のために開発されたため、実験の仕様が「4kHz 〜 45kHz」の広帯域アンプとなっていました。
- アンプの直線性が悪い(歪みがある)と、45kHzで変調された通話の歪み成分が、下の10kHzや20kHzのチャンネルへノイズとして侵入し、他の人の通話を完全に潰してしまいます。
- だからこそ、45kHzまで変調されたすべての信号を「絶対に歪ませずに、まとめて一度に増幅できる」超高性能なアンプが絶対に必要となり、その結果として負帰還アンプ(1937年特許認可)という大発明がもたらされました。

戦前に175HQを造れた米国。
HEPTODE管もつくれなかった日本。 差はデカいわ。

- 選別基準:完成した管(175HQ)を5,000時間(約7ヶ月)連続で動作させ、合格した「7本に1本だけ」を海底に沈めるという、民間企業の常識を超えた超絶的な品質管理を行っていました。
- 結果:地球規模の有線通信網を守るため、大西洋の底で22年間、1本も壊れずに動き続けました
これが国際電話の起点です。
つまり、「音声信号を45kHzへ変調して電線に詰め込んだ」という当時の最先端の通信要求こそが、のちの電子回路の歴史を決定づけるすべての歪み対策(NFBから1975年のQUAD 405カレント・ダンピングまで)の出発点(真の生みの親)だったのです。
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「昭和20年代~昭和50年代には中和を取る」って表現がラジオの製作や cq ham radioに見られた。
nfbと呼ぶと 聞こえがいいので nfbって言葉が普及したが、日本人であれば世界初の負帰還特許名「 ニュートロン 」を使って支障ない。
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