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カレントミラー回路における信号レンジ限界の検証要約書 : 現実のレンジ限界考

1. 結論
バイポーラトランジスタを用いたカレントミラー回路において、音声信号を実用的な歪み率(THD)および線形性(リニアリティ)を維持したまま伝達できる動的信号レンジの物理的限界は、「最大でも約66dB(実用安全圏では40〜60dB)」である。大メーカーの特許公報やオーディオ誌が謳う「100dB超」といったスペックは、過渡応答やシリコン半導体固有の漏れ電流を無視した机上の空論であり、実回路においては達成不可能である。
2. 限界を決定付ける物理的要因
  • 不可避なリーク電流(50nAの壁):レンジ下限
    現代の極めて優秀な半導体(ICおよびディスクリートペア)であっても、接合部におけるコレクタ遮断電流(Icbo)や迷走電流として、最下層で最低50nA(ナノアンペア)前後の制御不能な漏れ電流が常時発生している。実作動時の温度上昇に伴い、このリーク電流は乗算的に増加し、微小信号領域のノイズ床(フロア)を決定的に汚染する。この50nAがコレクタ電流の実質的な下限を縛る絶対防衛線となる。
  • 小信号トランジスタ(2SC1815 / BC184L等)におけるベース電流上限100μAの制約:
    カレントミラーの制御精度を維持し、実効的な直線性や熱設計を担保するためには、アンプ回路に多用される 2SC1815 や BC184L などの小信号トランジスタが引き受けるベース電流((Ib)に「100μA(100,000nA)」という物理的な絶対上限が課される。これを超えて電流が流れ込むと、hFEの非線形急落(電流垂下特性)やベース抵抗の電圧降下により、ミラーの主従関係とインピーダンスバランスが動的に崩壊する。回路の歪みを防ぐための実効上限は、これら汎用小信号管の素子規格として100μAのラインで上限ロックされている。
  • ベース電流視点での隠れたリークとスペックの嘘:
    コレクタ電流下限50nAに対し、hFEを200〜400と仮定してベース電流の限界値を割り出すと、下限は0.125nA〜0.25nA(125〜250pA:ピコアンペア)という極小の世界になる。   
    上限100μAとの対比から、机上計算では「112dB〜118dB」という広大なレンジが導き出され、入力信号レンジ100dBが確保できるような錯覚におちいる。
    しかし実回路では、ベース・エミッタ間の接合面から制御不能なベース漏れ電流(Ibbo)が数nA規模で常時湧き出ている。回路が相似形を保つために必要とするpAオーダーの微小信号(情報密度)は、コレクタに到達する前、ベースの入り口の時点でこのIbboに呑まれて100%消滅する。さらに、2〜3mAのアイドル時におけるエミッタ動抵抗 の非線形な激変が入り口のインピーダンスを動的に暴走させ、リニアな伝達の天井を引き摺り下ろす。
  • 電流信号伝達構造の宿命と時間軸のペテン:
    カレントミラーは電圧ではなく「電流そのもの(Δ I)」で信号をリレーする。底辺(50nA)から上限のベース電流(100μA=100,000nA)までの実質的に制御可能な有効比率は2,000倍であり、デシベル換算におけるクリーンな信号レンジの上限値は「約66dB」となる。
    この極小の隙間でNFB(負帰還)をかけても、遅い時間軸(可聴周波数)では処理が追いついてリニアに見えるが、速い時間軸(100nAの極小信号や超高速パルス)では、反転駆動の処理が絶対に間に合わず、波形は非相似(歪んだまま)で突き抜ける。電気信号は電子の遅い移動ではなく、銅線の周囲の空間を光速で伝わる「電磁界の誘導」で伝達されるというマクスウェル(Maxwell)の物理原則から逃れることはできない。
  • アーリー効果の罠:
    信号スイングに伴うコレクタ・エミッタ間電圧(Vce)の動的変動は、カレントミラーの出力インピーダンスを瞬時に引き下げ、電流の取りこぼし(歪み)を発生させる。
3. 総括
したがってオーディオメーカーは2段カレントミラー等を採用しレンジ拡大(cd音源でも実測80dB、理論値100dB)しなければならない。物理計算ができないエンジニアはシングルのカレントミラーで悦に浸っているのが、現代オーディオ界の到達点である。
実在するdiyメーカーの回路図に見られる、上下の電流ルートを垂直に突き抜けて直結するような回路は、ハイファイな精度向上ではなく、レンジの狭さゆえに発生する非相似な歪みや動的コンプレッション(自己フィードバック)を逆手に取ったエフェクター的挙動に過ぎない。
マーク・アレキサンダー氏の電流帰還における2〜3mAの駆動段設計は、この100μAの天井と50nAの底辺のせいで「信号を一度閉じ込めると情報密度が低下する」という半導体の物質的限界(ジレンマ)を直視した上での、ギリギリの勝負であった。
「音が出れば勝ち組」とするその風潮を技術的に峻別するためには、50年前のサンスイ(山水電気)に見られる2段ミラー等の古典的知見を再学習し、50nAの漏れという現実を直視した冷徹な実機検証(レンジ確認)が必須である。
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📊 カレントミラーのレンジ拡大術:真のレンジ限界表(決定版)

方式(トポロジー) 実効信号レンジ限界 100dBに届かない物理的理由(天井と底辺)
1. ウイルソン型
(3本目補償型)
約 76 dB 〜 80 dB 【底辺のノイズ増加】 トランジスタを3本に増やすことでベース電流誤差は1/hFE²へ激減し、天井は広がります。しかし、3本目の素子が発する熱雑音(ショットノイズ)が底辺の50nAのリーク床をさらに押し上げてしまうため、結果として下のレンジが削られ、80dB付近で限界を迎えます。
2. ワイドラー型
(エミッタ抵抗非対称)
約 72 dB 〜 76 dB 【時間軸遅れの悪化】 出力電流を1/10〜1/100に縮小して取り出すことで下のリーク(50nA)を相対的に小さく見せかける技です。しかし、電流を極小に絞った出力側トランジスタはft(速度)が最悪の領域まで低下します。 マクスウェルの言う「時間軸の遅れ」が爆発的に増え、速い時間軸のパルスが入った瞬間に相似形が完全に崩壊(超ノンリニア化)します。
3. ブートストラップ型
(同位相動的バイアス)
約 80 dB 〜 85 dB 【過渡応答のタイムラグ】 Vceを一定に保つため、信号電圧(ΔV)に合わせて回路全体の電位をフワフワと揺らします。サチュレーション対策としては強力ですが、電位を揺らすためのコンデンサやバッファ回路に「数ナノ〜数十ナノ秒の追従遅れ(タイムラグ)」が必ず発生します。音が鳴ったアタックの一瞬、電位の同期がズレて結局アーリー効果がモロに噴き出すため、85dB付近が実質の天井です。
4. 汎用FET置換型
(2SK30 / 2SK170等)
約 70 dB 〜 76 dB 【ゲートリークとペアリングの闇】 ゲート電流がゼロになるため100μAの天井は完全に消滅します。しかし実在するFETには「ドレイン・ゲート間漏れ電流(Igss)」が数nA〜数十nA規模で存在します。 さらに相互コンダクタンス(gm)が低く、特性のバラつき(Vgsの不一致)が激しいため、ミラー比自体の直線性が非常に悪く、70dB台で折れ曲がります。
5. 2段カレントミラー型
(カスコードミラー / サンスイ方式)
約 85 dB 〜 90 dB 【ディスクリート半導体の絶対天井】 Vceを完全に固定し、アーリー効果(動的インピーダンス崩壊)をゼロに封じ込める最強トポロジー。素子の選別、熱結合、ノイズ対策のすべてを「死ぬほど上手にやって」ようやくむしり取れる聖域の数字。
これ以上は、どれだけ上流を追い込んでも消せない「50nAのリーク床」、素子倍増による「ショットノイズの蓄積」、そしてトランジスタ段数増加に伴う「マクスウェル遅延(高周波の位相回り)」というシリコン物性の限界に激突するため、100dBには絶対に届かない。50年前のサンスイが実現した人類史の最高到達点。

山水のエンジニアはすごかったのだ。

電圧変化を電流置換して後段に伝えるカレントミラー回路であるが、奇数次歪発生装置として優れておることを忘れてはだめだ。 生成される奇数歪起因で 音エッジがたちあがり、ftの高いTRほどエッジが強くなる特性がある。

音源の忠実性をもとめるならカレントミラーはさけておく。  信号レンジで シングル60dbしか確保できない回路をさわるよりは古典電圧増幅回路(電源電圧30V)なら、信号レンジ100dBはとれる

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カレントミラーが持つ特有の非線形性(奇数次歪)を排除するのではなく、「音作りの積極的なキャラクター(エッジ感やスピード感)」として逆利用・コントロールするディスクリートアンプの設計手法も存在する。

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