多種類リンク

« Neve BA283の技術説明 :  エモーショナルサウンドを生む回路。Neve BA283 が「エモ音」の王様である理由 | メイン

2026年8月15日 (土)

音響信号の頭が消えるアンプ. 100n秒ほど食べられて情報欠損します。ギターアンプとして優れてます。

[技術的な定義の矛盾を整理し、電子工作ファンや消費者が誤った認識で商品を選ばないための注意喚起を目的としています」

*******************************************************

出力波形は、原音との相似性がないことはたちどころにわかる図です。 そのエモーション具合を数値化してみた。 

101014_4_3_5

 実は、ギターアンプ用途としてすばらしい回路です。FM変調が上手にできています。 名機 BA283とは違うFM サウンドです。

Buffer5_2

出口サウンドの模式図。「意図して不感帯をつくってある」ので、これがエレキにFITします。

Image_d1

実際のClass B動作を反映した総合出力式

入力信号がゼロクロス(0V)を通過した時刻を t0、電荷蓄積遅延時間を Δt(100ns)とします。

【1】不感帯領域(100nsの沈黙)
条件: t0 ≤ t < t0 + Δt のとき
vout(t) = 0
【2】オン領域(激しい変調と復帰)
条件: t ≥ t0 + Δt のとき
vout(t) = 10 · Vm · [ 1 - m · vin(t) ] · sin( ωt + φ0 - ΔΘ · vin(t) - Δφdelay )

周波数ごとの位相遅れ計算結果

周波数が高くなるほど1周期の時間が短くなるため、100nsの固定遅延が与えるインパクト(位相の遅れ度数)は劇的に大きく(周波数に比例して)なります。

① ギターの低音域:80 Hz (6弦開放 E音付近)
  • 1周期の時間:12,500,000 ns
  • 位相遅れ(Δφdelay):約 0.003°
  • サウンドへの影響 ほぼゼロ。100nsは一瞬すぎるため、波形はほぼ理想的なサイン波のまま通過。
② ギターの中音域(基本波):1 kHz (高フレットソロ、抜けの核心)
  • 1周期の時間:1,000,000 ns
  • 位相遅れ(Δφdelay):約 0.036°
  • サウンドへの影響 角度は僅かだが、高次倍音へバトンを渡すベースの位相として、耳の肥えた人には「わずかな粘り」として感知
③ ギターの高音域・倍音成分:5 kHz (アタックの鋭さやエッジ、きらめき)
  • 1周期の時間:200,000 ns
  • 位相遅れ(Δφdelay):約 0.18°
  • サウンドへの影響 1周期に対し往復で200ns(0.1%)が削られる。高音のエッジがわずかに丸くなり、カドの取れた有機的な質感へ変化。
④ ピッキングの超高域・アタック成分:20 kHz (可聴帯域の上限、鋭い摩擦音)
  • 1周期の時間:50,000 ns
  • 位相遅れ(Δφdelay):約 0.72°
  • サウンドへの影響 1度近く位相が遅れる。耳に突き刺さるようなノイズ成分が綺麗に「後ろに滑る」ため、歪ませても耳が痛くならない。

この計算からわかる「動的フェイザー効果」

この回路の面白いところは、通常のEQのように高音を小さくするのではなく、「高音(倍音)になればなるほど位相を後ろに遅らせる(FM変調)」点にあります。
しかも、大信号(アタック)時は遅延がキュッと短くなり、小信号(サステイン)になるにつれて遅延の影響(度数)がじわじわ広がります。これが弾き手のタッチにリアルタイムに追従する「ミクロな動的フェイザー(移相器)」として働き、独特の「うねり」を生み出します。

アタック最初の一瞬(過渡応答)の4フェーズ解析

無信号の「完全な静寂」から、ピッキングによる大信号が入力された瞬間の、C1/C2およびオペアンプの動的挙動のタイムラインです。

【Phase 1】 静的待機状態(t < 0)─ 眠れる回路
  • LT1227の状態: 無信号時出力電流はわずか 3.5µA。非常に省電力で「眠っている」状態。
  • コンデンサ(C1/C2): 電荷は完全に平衡状態で、充放電電流はゼロ。
  • SEPP(Q10/Q11): バイアスダイオード(D1〜D4)の電圧だけでは2N2222等のカットオフを越えられず、出力段は完全に遮断(0V固定)。
【Phase 2】 アタック直撃(t = 0)─ 超高速スルーの目覚め
  • LT1227の状態: ギターのピッキングによる急峻な電圧変化を検知。LT1227の超高速スルーレート(数k V/µs)が火を吹き、出力電流が 3.5µA から一気に最大ドライブ電流まで跳ね上がります。
  • この瞬間の出力: まだ 0V。SEPPがまだオンになっていないため、外には音が一切出ません。
【Phase 3】 電荷チャージ(0ns < t < 100ns)─ 嵐の前の静けさ
  • コンデンサの挙動: LT1227から吐き出された大電流が、C1(10nF)とC2(1nF)の充電に100%吸い取られます。
  • ベース電圧の急上昇: 電流が吸い取られながらも、C2(1nF)の両端電圧、およびQ10のベース電圧が、SEPPをオンにするための閾値(15µA / VBE⊂⊂0.6〜0.7V)に向かって超高速で上昇していきます。この100ns間、出力波形は真横(0V)に張り付いたままです。
【Phase 4】 SEPP爆発的オン(t ≥ 100ns)─ 色気のトリガー
  • SEPPの挙動: 100nsのチャージが完了した瞬間、Q10(またはQ11)が完全にカットオフ領域を脱出し、急峻に立ち上がります(急激なhFEの復活)。
  • 波形のキャッチアップ: それまで100nsの間フリーズしていた出力電圧が、本来あるべきだった電圧(10倍ゲインの位置)へと垂直に近い角度でブースト。この「せき止められていたエネルギーの一気の大放出」が、数式にあったステップ状の振幅スパイク(動的AM/FM変調のトリガー)となり、ギターのアタック音に強烈な「コンプ感」と「エッジの立った色気」を付加します。

過渡応答の結論:なぜアタックが心地よいのか?

この一連の動きにより、ギターを弾いた瞬間の「最初の100ns」だけ音が完全にミュートされ、その直後に弾けるように音が立ち上がります。人間の耳はこの微小なタイムラグを「音が遅れた」とは認識せず、「アタックの密度がギュッと凝縮されて、音が前に飛び出してきた」と感じます。これが、この独特なB級バッファ回路が持つ過渡応答の魔力です。

弾き手のタッチにどこまでも追従する「超高速な動的コンプレッサー 兼 フェイザー」として奇跡的に機能していることを、数式と過渡応答の両面から証明した

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.dcnblog.jp/t/trackback/549708/34289130

音響信号の頭が消えるアンプ. 100n秒ほど食べられて情報欠損します。ギターアンプとして優れてます。を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

ウェブページ

カテゴリ

Powered by Six Apart