NTTコミュニケーション科学基礎研究所の香村氏らによる2019年の著名な論文「Cascaded Tuning to Amplitude Modulation for Natural Sound Recognition」から引用。

- 図a(時間領域): 上段のSpeech(音声)の黒い線(振幅エンベロープ)が、数秒かけて大きくうねっているのが分かります。
- 図b(変調スペクトル): 横軸のAM rate(変調周波数)が1Hz〜5Hzの領域に、Speechの振幅エネルギーが完全に集中しています。これに対して、Rain(雨音)のような環境音は10Hz以上の高い領域に広く分布しています。
一見すると 「env成分で低周波発振器信号を変調したような絵」だ
🔊 音響におけるこの現象の理由
- テンポやリズムの周波数
音楽のテンポ(BPM)を周波数に換算すると、すべてこの帯域に収まります。
- BPM 120の4つ打ちキック = 2 Hz
- BPM 60のバラード = 1 Hz
- 16分音符の細かい刻みでも 8 Hz 程度です。
- 言葉の話速(音声エンベロープ)
人間がしゃべるスピード(音節の区切り)は、世界中の言語で共通して約4Hz〜7Hzの周期(1秒間に4〜7文字程度)にピークを持ちます。
1. 「ロングトーン(持続音)」とメロディの周期
話し言葉は1秒間に4〜7文字(4〜7Hz)とテンポが速いですが、歌は「母音を長く伸ばす(ロングトーン)」ため、音量変化の波はさらにゆったり(=より0Hzに近い超低周波に)なります。
- 1音の長さ: 歌の1音は、全音符や2分音符、フレーズの終わりのロングトーンなど、1秒〜数秒(1Hz〜0.3Hz程度)続くことが普通です。
- ビブラート: 歌声の語尾にかかる綺麗なビブラートは、だいたい5Hz〜7Hzの周期で音量やピッチが揺れます。これも絶妙に10Hz以下に収まります。
2. 「ブレス(息継ぎ)」による大きなうねり
歌には「息を吸って、フレーズを歌いきり、また息を吸う」という、人間の呼吸に合わせた2秒〜5秒単位(0.5Hz〜0.2Hz)の巨大な音量の波があります。これがエンベロープの0Hz(直流)付近のエネルギーを大きく跳ね上げる原因になります。
つまり、楽器の音や話し声の「音量の波」を抽出すると、自然と10Hz〜0Hzの直流(DC)に近い成分が99%を占めることになります。
******************************************************************************
「0.001Hz〜10Hz」という極めて低い周波数帯域、つまり「DC(0Hz)〜10Hz」の超低周波領域に、音響信号のエンベロープ(音の強弱の変動)のエネルギーのほぼすべて(99%)が集中しているというのは、音響・音響信号処理における重要な事実です。
音のダイナミクス(曲の展開、一音一音の減衰、無音から大音量への変化など)は、数秒から数時間、あるいはそれ以上のスパンで変化するため、そのエンベロープのスペクトルを解析すると、ほぼ100%がこのDC〜10Hzのエリアに集まります。
この「99%が0Hz〜10Hzに分布するエンベロープ」を音響アンプで扱う場合、まさに以下のような回路の物理的な壁と正面からぶつかることになります。
1. 差動入力の引き算で「99%が消し飛ぶ」理由
エンベロープの99%がこの帯域にいるということは、この成分は電子回路の視点では「ほぼ完全な直流(DC)」として見えます。
もしアンプの差動入力(+端子と-端子)の両方に、このエンベロープ成分が「同相信号」として乗ってしまった場合、差動アンプは直流付近の除去能力(CMRR)が最も高いため、99%存在するエネルギーのほぼすべてを「不要なDCオフセットのズレ(ノイズ)」とみなして引き算し、消し去ってしまいます(結果として0.03%しか残らない)。
******************************************************
なぜ0Hz〜10Hzのエンベロープが「音の抜け」を決めるのか?
人間は20Hz以下の音を「耳」で直接聴くことはできませんが、「音の立ち上がり(アタック)の鋭さ」や「空間の響き(サスティン・リリース)」のうねりとして、この0Hz〜10Hzのエンベロープ成分を体感しています。
- アタックの抜け:音が鳴った瞬間にアンプが瞬発的に大電流を求めます。この瞬間のエンベロープの立ち上がりが遅れたり、差動回路で抑え込まれたりすると、音がナマって「抜け」が悪くなります。
- 空気感・余韻:ホールの響きや楽器の余韻がゆっくり消えていくグラデーション(超低周波のエンベロープ)が潰れると、音が不自然にブツ切れになり、音場が狭く感じられます。
音響信号における0Hz〜10Hzのエンベロープとは、まさに音が前に飛び出してくるダイナミクス(抑揚や生命感)そのものです。
- アンプにEnvがしっかり伝達される ➡ 音の立ち上がりや強弱のコントラストがそのまま維持されるため、ヌケが良く、リアルで生き生きとした音になります。
- もし差動入力でEnvを0.03%まで(CMRR 70dB)に消し去ってしまったら ➡ 抑揚がすべて平坦に押しつぶされ、ダイナミクスが失われるため、音が奥に引っ込んでしまい「ヌケの悪い音」になってしまいます。
****************************************************************
「差動入力回路で音のヌケを悪くする」のが流行りだからね、MJみても差動入力回路マンセーですわ。
古典(1960年代)のエミッタ接地では envの0.18Hzや2.2Hzを吸い込む工夫がはいっておった。ターゲットのenv 周波数も研究で判明してきたので、 1Hzから5Hzあたりを中心にすえたenv吸い込む工夫が audio ampでは必要だ。
万が一差動入力回路を使うなら 捨てられたenvとの合体(乗算)が必要になる。この乗算が支障なく実行できるのがMC1595(.ハワード・E・ジョーンズ Howard E. Jones)くらいだ。ヒントとして提案する。
真空管ラジオをたくさんつくった(丁度150台)オイラが、これを実現しちゃ困るDIY屋が多数でるだろう。だからhint
***************************************************************************************
外側の橙ラインがエンベロープです。 これを差動入力回路では同相ノイズとして99.98%ほど除去します。envのことは ここに詳しく公開されてます。

コメント