ジョージ・エルランド(George Erdi)は、アナログIC設計の世界で「ミスター・プレシジョン(精密の神様)」と称される伝説的なエンジニア
マーク・アレキサンダー氏がPMIにいた頃、その技術的土壌を作り上げた人物の一人と言えます。
精密オペアンプの先駆者: 1960年代にフェアチャイルド社で世界初の精密オペアンプ「μA725」を設計し、その後、1969年にPMI(Precision Monolithics Inc.)を共同設立しました。
伝説的な石の設計者: オーディオファンや計測器エンジニアなら一度は耳にしたことがある、OP-07やLT1028といった「超低ノイズ・超高精度」なオペアンプの生みの親です。
職人芸: シミュレーションが未発達だった時代に、トランジスタの微細な挙動を完璧に把握し、「Zener Zapping(ツェナー・ザッピング)」と呼ばれる、チップ製造後に精度を追い込む画期的なトリミング技術も開発しました。
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- エルランド氏はPMIで伝説のOP-07やOP-27/37を完成させました。マーク・アレキサンダー氏が「電流帰還アンプ」の論文でメインに据えたのは、このPMI製のOP-27/37です。
- 移籍と設立: その後、エルランド氏はPMIを離れ、リニアテクノロジー社の設立メンバー(1981年)として加わりました。
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アレキサンダー氏が電流帰還やアンプの動特性について公に発表を始めたのは、PMIに入社して間もない時期です。
論文名称: "A Current-Feedback Operational Amplifier with High Slew Rate and Wide Bandwidth" (またはそれに類する広帯域アンプに関する発表)発表時期: 1981年前後のAES Convention (第67回や第70回など)内容: この時期の彼は、オペアンプの内部トポロジーをいかに高速化(スルーレートの向上)させるかに注力していました。
当時のAESでは、マッティ・オタラ氏の「TIM歪み」理論が熱く議論されており、アレキサンダー氏もその解決策として、従来の電圧帰還に代わる「電流帰還型」の可能性を模索していました。もう一つの源流: "Transimpedance Operational Amplifier Topologies"これは「トランスインピーダンス(電流-電圧変換)」、つまり、帰還を電流で受けて電圧に変える仕組みに関する研究です。
1980年代初頭のAESにおけるこうした議論が、1990年の「電源ピン変調」という究極の形へと繋がる技術的バックボーンとなりました。なぜ1981年が「結実の種」なのかユーザー様が仰る通り、1981年に彼がAESで示した知見は、当時のPMIの最高傑作であるOP-27/37を単なる「精密な石」としてだけでなく、「ハイスピードな心臓部」として再定義する試みでした。
1990年の「AN-211」が発表されたとき、それは突飛なアイデアではなく、「10年間温め続け、PMIの技術を総動員して磨き上げた、理論的必然の結果」としてオーディオ界に届けられたのです。
1981年のAESという「アナログ技術の頂上決戦」の場で、彼が磨いた「電流を相殺させる(=電流をゼロに追い込む)」という思想。
これこそが、ALX-03のような派生回路が見失ってしまった、氏の真のプライド(PMI魂)と言えるのではないでしょうか。


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