差動入力回路の扱える信号レンジについて

差動入力回路の信号レンジは66dBが理論値。 現実には50dBの入力レンジがあれば由だろう。  入力レンジ拡大には2段差動がもっとも効果があるが、それでも理論値は95dBまではくるすぃい。 CD音源が 信号レンジ80dBなので、「85~90dBの信号レンジはほしい」のはメーカーエンジニアの考え。 

ショットノイズ(散弾ノイズ)の壁
リーク電流を相殺しても、トランジスタの接合部をキャリア(電子や正孔)が通過するときに発生する「ショットノイズ」は消せません。アイドル電流を小さくしていくと、このノイズの比率が相対的に大きくなり、実用的な信号として取り出せる下限が存在します。

********************************

項目 差動入力方式(一般的なアンプの初段) 対数(Log)関数利用回路(コンプレッサー等)
主な用途 音楽信号の増幅(パワーアンプ、プリメインアンプ) 音量(ダイナミックレンジ)の圧縮・制御、VCA
ベースとなる物理特性 差動対の特性(双曲線正接 tanh 特性) VBE と IC の関係(純粋な指数・対数特性)
素の特性 超ノンリニア(非線形)
熱電圧 VT ≒ 26mV に支配される
超ノンリニア(非線形)
※ただし理想的な対数カーブを描く
生の動作リニア範囲

極めて狭い(40〜50dB程度) カレントミラーの電流比上限とイコール
※70dBには到底届かない

極めて広い(100dB〜120dB以上)
※対数軸(dB)として直線的に動作する
設計の目的 ノンリニア性を「力技で消し去りたい」 ノンリニア性を「積極的に利用したい」
アプローチ手法 エミッタ抵抗で線形領域を少し広げ、負帰還(NFB)で強引に入出力を「1:1(直線)」に補正する。 信号をあえてデシベル(Log)に変換し、人間の耳の特性に合わせた滑らかな音量制御(乗算・除算)を行う。
実動作での限界と弱点 高域や過渡信号(急な音)ではNFBが間に合わず、狭いリニア範囲を飛び出してサチュレーション(TIM歪みなど)を起こす。 半導体の温度変化によって対数特性がズレやすいため、温度補償回路(ペアトランジスタ等)が必須となる。

********************************

メーカーはexp関数が支配する コンプレッサー型パワーアンプに路線変更した。

Az

コンプレッサーが軽度にかかった音に人気があるらしい。

Graph11

*********************************************

1. 電流が小さすぎる壁(リーク電流とノイズ
\(\exp \)関数(またはLog関数)の直線性を下側に広げようとすると、微小電流(ナノアンペア(nA)やピコアンプ(pA)の領域)を扱うことになります。しかし、ここでは以下の問題が発生します。
  • 半導体固有のリーク電流(逆方向飽和電流  Is)に埋もれてしまい、数式通りの綺麗なexpカーブから外れてしまいます。
  • 熱雑音(ノイズフロア)により信号が完全にかき消されます。
2. 電流が大きすぎる壁(バルク抵抗の存在)
逆に、信号の上側を広げようと大電流を流すと、トランジスタ内部の純粋な「半導体接合」以外の部分、すなわちシリコン素材そのものの物理的な抵抗(バルク抵抗・オーム抵抗)による電圧降下  I x R  が無視できなくなります。
  • これにより、本来は綺麗なexp関数で動くべきベース・エミッタ間電圧が、ただの「直線の抵抗器」の特性に支配され始め、動作が破綻(サチュレーション)します。LH0003も同様に大信号入力時には抵抗器特性になる(data sheetに記述ある)

だからこそ、高級な「100dB超」のアンプは例外的な細工をしていた

  内部でオペアンプと組み合わせて、常にベース・コレクタ間の電位差をゼロに保つ(バーチャルショートを利用したギルバートセルなどの応用)が流行り。

 

コメント(0)